言葉の力|みうらじゅん——昔の写真と、今の自分を比べてしまう日に

昔の写真を見返して、まず髪形に驚く。こんな服を着ていたのかと笑って、それから、今とはずいぶん顔が違うことに気づく。懐かしいだけでは済まない日もあるかもしれません。

年齢の変化を前にすると、若く見えるかどうかの物差しを持ち出しがちです。みうらじゅんさんは、その物差しの使い方から、ひょいと変えてみせます。

今日の名言

もちろん、「でしょ?」と返しますね(笑)。

みうらじゅん/ほぼ日「みうらじゅんに訊け! アウト老編」第2回、2024年11月13日

「老けた?」への、意外な返し方

この言葉は、誰かに実際に言い返した体験談ではありません。インタビューで、もし最近急に老けたと言われたらどうするか、という仮の会話を展開した場面での発言です。

みうらさんは、昔話の「花さかじいさん」や「こぶとりじいさん」を引き合いに、自分ならどんな呼び名になるかを考えます。「マイブームじいさん」、縮めて「マイジー」。そして、その人物像に合わせて、あえて老けて見えることを楽しむ「老けづくり」を始める、という話になるのです。

その設定なら、老けたと言われても、取り組みが伝わったことになる。そこで出てくるのが、今日の返答です。さらに、年齢を答えて若いと言われたら、まだ足りないというふりをするところまで、冗談は続きます。

老いの悩みを一言で解決する助言というより、ふだんの評価をひっくり返す、みうらさんらしい言葉遊びです。

写真の中の自分と、勝負しなくても

ここからは、このやりとりを日常に重ねた本記事独自の考察です。

昔の写真を見て、今の自分が負けたように感じるとき、比べているのは主に見た目かもしれません。でも、その写真の頃には知らなかった好きな店や、気を張らずに会える友人が、今はいることもあります。

外見の変化が気にならなくなる、という話ではありません。ただ、同じ写真を見ながら、あの頃はこの髪形が大成功だと思っていたんだな、と別の話もできる。比較の時間が、思い出話に変わる余地はありそうです。

みうらさんの冗談では、若く見えるという褒め言葉さえ、目指す人物像とは違うということになる。何をよい評価とするかが変わると、いつもの会話が急にコントのように見えてきます。

もちろん、年齢や容姿について言われたくない人もいます。嫌な言葉に笑って返す義務はありません。この返答は、誰にでも勧める受け答えの正解ではなく、本人が自分の変化を面白がるための一例です。

アルバムは、採点表ではない

写真を閉じたあと、鏡に映るのは今の自分です。昔の髪形には戻らなくても、昔の写真を笑って見られる今の時間はあります。

みうらさんの「でしょ?」には、ほめられる側の席から、いったん降りてみるような軽さがあります。自分の変化を、いつもの物差しだけで眺めなくてもいい。そんな余韻が残ります。

出典・参照

ほぼ日「みうらじゅんに訊け! アウト老編」第2回「マイブームじいさん。」、2024年11月13日。掲載インタビュー。

引用は掲載インタビューの日本語原文です。英語版の確定訳は “Of course, I’d say, ‘Right?’ (laughs).”(本記事独自訳)。本人が英語で述べた言葉ではありません。仮の会話と実際の体験談を区別しています。写真の導入や日常例は本記事の創作で、本人の体験ではありません。


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