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「やってみなはれ」
鳥井信治郎
何かを始めようと思って、まず調べる。
必要なものを確認して、評判を読んで、失敗しない方法を探す。気づけば、始めるために開いたスマートフォンを見たまま、時間だけが過ぎています。
準備は進んだ。
比較表もできた。
でも、まだ一度もやっていない。
そんな日に思い出したいのが、「やってみなはれ」という言葉です。
サントリーの公式紹介では、この言葉は創業者・鳥井信治郎の口癖であり、未知の分野に挑む精神と結び付けられています。ここからは、その言葉を日常に重ねた私自身の受け止め方です。
調べることで、安心まで手に入れようとしていないか
始める前に確認することは大切です。
けれど、必要な情報を集めることと、不安が完全になくなるまで調べることは、少し違うのかもしれません。
文章を書きたいのに、書き方の解説ばかり読む。
散歩を始めたいのに、歩くための道具ばかり探す。
部屋を整えたいのに、収納の実例だけが増えていく。
調べたことを無駄にしないためにも、どこかで一度、実物に触れてみたいものです。
最初の一回を、小さくする
「やってみる」と聞くと、大きく踏み出さなければならない気がします。
でも、最初から立派な挑戦にしなくてもいいでしょう。
記事を一本書く前に、最初の三行だけ書く。
部屋全体を片づける前に、机の右端だけ空ける。
毎日運動すると決める前に、今日は家の周りを五分歩く。
始める大きさを小さくすると、試したあとに考え直す余地も残ります。
これは、言葉の原意を断定するものではなく、暮らしの中で私が取り入れたい方法です。
やってみた結果を、自分の採点だけに使わない
実際にやると、思ったより難しいこともあります。
だからといって、「やっぱり自分は駄目だった」で終わらせるのは、少し惜しい気がします。
どこで手が止まったのか。
何が足りなかったのか。
反対に、意外と楽しかったのはどこか。
やってみたからこそ、次に考える材料が生まれます。
もちろん、安全や健康、大きな出費に関わることまで、勢いだけで決める必要はありません。確認や相談が必要な場面は分けて考えたいものです。
今日は、失敗しない自分を完成させるより、小さく試せることを一つ選ぶ。
準備中のままになっている何かに、五分だけ触れてみる。
「やってみなはれ」を、自分を急かす掛け声ではなく、最初の一回を軽くする言葉として持っておきたいと思います。
引用・背景の出典:サントリー「やってみなはれ」の歴史

